
コンテスト審査委員長 石隈利紀先生
東京成徳大学応用心理学部特任教授/学校心理士認定運営機構理事長/こども家庭庁いじめ調査アドバイザー

本年度も昨年に続き、文部科学大臣賞のお二人を招待し、都内の会場にて表彰式を行いました。
2026年3月27日(金)
東武ホテルレバント東京3F「藤菊」
文部科学省 初等中等教育局 児童生徒課 生徒指導室
生徒指導調査官 児童虐待防止・対策専門官 池田 真信 様
漫画家(代表作『聲の形』『不滅のあなたへ』) 大今 良時 様
長崎県PTA連合会 副会長 鮎川 徹也 様
長崎県PTA連合会 事務局長 浦上 保彦 様
兵庫県PTA協議会 専務理事 船田 大二郎 様
兵庫県PTA協議会 事務局長 前田 富美代 様
第十九回いじめ防止標語コンテスト
文部科学大臣祝辞
第十九回いじめ防止標語コンテストが、多数の応募のもとで開催されましたことに、心よりお祝い申し上げます。
そして、この度受賞された皆さん、誠におめでとうございます。
第十九回を迎えた本コンテストにおいて、皆さんの作品はいずれも、いじめの防止・根絶を呼びかける強いメッセージが伝わってくるすばらしい作品でありました。
まず、いじめは絶対にあってはなりません。この場にいる皆さんは、全員同じ思いを持っていると思います。しかし、年始からは、学校での暴力行為などの動画がSNSに投稿・拡散され、重大な暴力行為やいじめが学校で起きているのではないか、そして、それが見過ごされているのではないか、と心配する声が高まっています。文部科学省としても、皆さんが安心して学習できる環境を守るため、全国の教育委員会や学校と共に、いじめの未然防止教育や、早期発見のための相談体制の整備などの取組を進めてまいります。
その上で、いじめを生まない環境をつくるために何より重要なことは、児童生徒の皆さん一人一人の力です。是非、本コンテストに参加した皆さんにおかれましては、今回受賞されたいじめの防止に向けたメッセージを、学校の仲間に持ち帰り、広げていってください。皆さんの想いに共感し、周りの人を大切にする仲間が増えていけば、いじめのない環境に一歩ずつ近づいていくはずと考えています。
そして、困っている人がいるとき、自分事として、何ができるのかと考えることができるような人間に皆さんが成長され、周りの人や自分を大切にできる大人になることを、心から楽しみにしております。
結びに、これまで熱心に指導してこられた先生方や御家族の方々など、受賞者を支えてこられた皆様、及び本コンテストの開催に御尽力いただきました関係の皆様に心からの敬意と謝意を表しますとともに、本コンテストの一層の御発展を祈念し、お祝いの言葉とさせていただきます。
令和八年三月
文部科学大臣 松本 洋平
審査委員である漫画家の大今良時先生から、文部科学大臣賞受賞者のお二人に似顔絵のプレゼントをいただきました。

コンテスト審査委員長 石隈利紀先生
東京成徳大学応用心理学部特任教授/学校心理士認定運営機構理事長/こども家庭庁いじめ調査アドバイザー

審査委員 品川裕香先生
教育ジャーナリスト/株式会社薫化舎取締役副会長/元文部科学省中央教育審議会委員
いじめ防止標語コンテストも19回目を迎えました。今年も全国から37万4,118作品が寄せられ、最終審査を通過した540作品を一つずつ丁寧に吟味し、議論をし重ねた末に選ばれた、まさに逸品揃いです。入賞された皆様、本当におめでとうございます。
すでに皆さんもご承知の通り、文部科学省は令和7年10月29日、令和6年度における小・中・高等学校及び特別支援学校におけるいじめの認知件数が769,022件となり、前年度より36,454件(5%)増加したこと、児童生徒1000人当たり61.3件と4年連続増加し、過去最多となったことを発表しました。
さらに、いじめによって児童生徒の生命、心身、財産に重大な被害が生じた疑いのある事案は768件、長期欠席を余儀なくされている疑いがある事案は896件と、いわゆるいじめの「重大事態」もそれぞれ増加しています。いじめが原因で自殺に至る、重傷を負う、長期不登校に追い込まれる人が増えていること。殴る、蹴る、首を絞めるなど身体的暴力が、まるで当たり前のように録画され、拡散されていること。学校内だけでは処理しきれないケースが増えていること。その結果、警察への被害届提出や裁判に発展し、学校や教育委員会の対応の不備、加害生徒の法的責任が問われ、明確化されつつあること・・・。こうした実態が、今、浮き彫りになり始めています。
しかし、見える化された数字やデータは氷山の一角に過ぎません。実際には、もっともっと多く、もっともっと根深く、そして嫌らしく潜んでいると私は取材を通して痛感しています。というのも、私が話を聞く子どもたちの多くが先生はもとより保護者にすら話していないからです。
なぜ、誰にも言えず、1人で抱え込むしかないのか。
なぜ、明らかに不適切だと分かっている、他者を傷つける言動に至ってしまうのか。
この「なぜ」の部分こそ、子どもも保護者も教師も地域社会も行政も政治も、全ての立場の人が深く掘り下げて、考え続けていかなければならないところだと私は思っています。
このいじめ防止標語コンテストが、その思索と対話の一助になることを切に願っています。
大切なのは、整えられた綺麗な標語を提出することではないのです。自分の頭で考え、自分の血や肉となっている言葉を、たとえ無骨であっても紡ぐことです。そこにこそ、課題解決の第一歩があると私は信じています。
今後も一緒に、できることから始めていきましょう。

審査委員 大今 良時先生
漫画家(代表作『聲の形』『不滅のあなたへ』)
「言葉は私たちを助けてくれるか」標語としての役割や新しい気付きのために応募作品を読ませていただきました。
今回の応募作は加害者でも被害者でもなく、それを目撃している人など中間の目線が多いと聞きました。
リアルな体験として、被害者加害者でもない中間の立場を自覚している人達が増えたのかな、と思いました。
誰も誰かの人生において悪役になんかなりたくないと思います。自覚無く加害者になっていたり、被害者になっていたりする場合もあると思います。
それに気付いた時、言葉による導きが大切だと思いました。そんな言葉を一生懸命考えてくださった皆様、ありがとうございました。
ご紹介いただきました石隈利紀と申します。
いじめ防止標語コンテストに、37万点を超える応募がありました。応募された小学生、中学生のみなさん、ありがとうございました。全国の学校や家庭で、いじめ防止の標語を作りながら、いじめについて考える時間をもっていただいたのではと思っています。
私も長く審査委員をしておりまして、最終審査というところで、一次審査、二次審査を受けた作品が来るんですけども、今回もどれもいいものばかりで選ぶのはとても大変でした。実行委員長の脇さん、漫画家の大今さん、教育評論家の品川さんと私の4人で、「これもいい、あれもいい」と迷いながら審査しました。
特に私たちが大事にしたのは、いじめ防止という観点で、どういうメッセージを発信するのかということです。色々な良い標語があったのですが、生徒さんたちが素直な言葉、率直な言葉で書いているもの、それから他人事とか評論ではなく自分事として捉えているもの、そういう観点から選ばせていただきました。
多くのすぐれた標語のなかで、特に小学校の部の片町 麗さんと、中学校の部の梶 陽栞さんの標語は私たちに迫るものがあって、ぜひ全国の生徒さん、先生方、保護者のみなさんと共有したいなということで選ばせていただきました。
私は心理学やカウンセリングが専門です。カウンセリングの相談では、人間関係に関するものも多いです。人間関係って難しいですよね。多様な人がいて、多様な人を尊重するということは、口では言えますが、それはなかなか難しいです。
人と人との関わりがあります。個人と集団の関わりもあります。そこで楽しいことも嫌なこともあります。私たちは人を傷つけることも、傷つけられることもあります。同時に、人を癒したり、また癒されたりするのも人間だと思うんですね。
それが少しでもうまくいくためには、「この人はこんな気持ちなのかな」という想像力をしっかり育てていくことと、「こういうふうに振る舞えばいいのかな」という自分の振る舞いを見直す力を育てていくこと。この二つが大事なんだろうなと思います。
その点で、今回の文部科学大臣賞を授賞された二つの標語は特にいいなと思いました。
片橋さんの方は「ふさいでも聞こえてくるその言葉」。
その言葉を聞いている人の気持ち、周りの声、そしてその状況が我々想像できます。
片橋さんはそういう状況や、聞こえてきて辛い思いをしている気持ちを想像されて書かれたんだなと思います。私たちの想像力は自分の経験もありますが、人から教えてもらったり、本を読んだり、漫画を見たり、映画を見たりして、出てくるのかなと思います。
中学校の部の梶さんの方は、「加害の裏には壊れた心 被害の背は深い傷 二つの痛みに理解が繋ぐ」。加害・被害ってなかなか簡単ではなくて、ある時は加害者になったり、被害者になったり、傍観者になったりします。それぞれの気持ちの中に色々な心や傷があるんだなということを想像する。それを理解しようとする。これはとても大事だと思います。
多様な世界で、多様な人たちは理解しきれません。でも「理解したい」と思うことは大事だし、「理解したい私がいるよ」というのを他の人に伝えることも大事なんだろうと思います。
小学校の部、片町 麗さん。中学校の部、梶 陽栞さん。文部科学大臣賞受賞、本当におめでとうございます。お二人のメッセージを、一緒に多くの方に届けたいと思います。
今回応募してくださったすべての生徒さん、ご支援された保護者のみなさん、先生方にあらためてお礼を述べさせていただき、審査委員長の挨拶に代えさせていただきます。
本当にありがとうございました。